FIT-510について
100Vの電圧を115Vに昇圧させるのに、一般的にはオートトランスと呼ばれる単巻きのトランスを使用します。
しかし本機は、単巻きのトランスを使用せずに複巻きと呼ばれるトランスを使用して115V の電圧を得ています
では、単巻きのトランスと複巻のトランスでは、どこがどのように違うのか解説してみましょう。
初期の電気理論で教わったような、磁束を発生させる 1 次巻き線コイルと発生させた磁束から電流を得るための 2 次巻き線コイルが独立しているのが複巻トランスです。
単巻きトランスは 1 次側のコイルと 2 次側のコイルが共通となっています。0-100V間は入力側と出力側が完全に共通で100V端子から銅線が延長されてステップアップ用の115V端子がもうけられています。0V端子は100V入力と115V出力の共用として使用されます。
単巻きトランスは 1 次コイルと 2 次コイルのかなり多くの部分を共有できるので、銅線の銅の使用量を削減することが可能です。必要な磁束はステップアップする電圧に対応する分の磁束が通れば良いので、磁束が通る鉄心の量も少なくて済みます。
電圧を上昇させる機能としては良いことずくめなのですが、2巻き線トランスなら可能な機能がひとつ足りません。
それは 2巻線トランスなら、1次側と2次側が接続されていないため、1次側と 2次側が絶縁できることです。
電灯線には様々な電子機器や電力機器からのインバーターノイズなどの高周波ノイズが同相(コモンモード)で乗っている場合が多いのです。このようなノイズをコモンモードノイズと呼びます。
音声回線のホット/コールド間は同相ですが、同相で音響機器に侵入したノイズ電流の帰りのルートが電源ラインにコモンモードで戻っていきます。
音声回線と電源ラインが大きなループアンテナとなっていて、その近辺にエアコンの室外機などの磁力線ノイズを発生する機器があると、コモンモードノイズを発生させてしまいます。
電源トランスの 1 次側と 2 次側が接続されていない(絶縁されている)とループ状態ではなくなるので、ノイズ電流は発生しなく(流れなく)なります。
複巻トランスにはコモンモード ノイズを防ぐ利点の他にもう一つ重要な利点があります。
一般的に音響機器の電源回路の AC 入力部分にはノイズフィルター回路が取り付けてあります。代表的な回路を以下に示します。
� ↓�番端子に ACプラグからの供給電圧を接続し、��、�と崔嫉劼鵬散禅ヾ鐺睇瑤療展参麩�尾を接続します。フィルターの出力側のアース端子には Cy(0.1μF がよく使われている)を通して��や�い�らの電圧がリークしてきます。 �い�ニュートラルの 0V、��がライブ側の100Vに接続されていたとすると、アース端子には50Vの電圧がリークしてきます。
この機器がプリアンプと仮定して、次段に120Vで働くパワーアンプをアンバランスのピンコードで接続したとします。パワーアンプのAC電源が単巻きのオートトランスで120Vに昇圧されている場合、パワーアンプのフィルター回路のアース端子には120Vの1/2の電圧がリークしてきます。プリアンプは50Vのリーク電圧が筐体にチャージし、パワーアンプには60Vの電圧がチャージされます。この二つの電位差10Vが筐体間電位差となって、ピンコードの両端に加えられるため、シールド線を経由してハムノイズがパワーアンプへ送られる事になります。二巻線の複巻トランスならACコードのニュートラルが絶縁されているため、10Vの筐体間電位差は発生せず、パワーアンプにハムノイズが送られることもありません。
このような理由から本機は、単巻トランスは使わずに2巻き線の複巻トランスを使用しています。